【現地取材レポート】Ideas of PORTLAND  創造都市ポートランドに見るコミュニティとビジネスの良好な関係

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アメリカ・オレゴン州にある人口約60万人の中規模都市ポートランド。「全米で最も住みたい都市」「全米で最も環境に優しい都市」「全米で最もグルメな都市」など、近年様々な側面から世界の注目を集める都市です。

これまでVOICEjpでは今後日本企業の有望な市場となる国・都市や、新規性のある商品・サービス等を紹介してきましたが、今号ではTNCが長らく取材・編集を担当している、国内外のまちづくりや暮らしのアイデアを特集するセガサミーホールディングスのウェブマガジン「Edea(イーディア)http://edea.jp/」とのコラボレーションで、話題の都市ポートランドのいまを取り上げます。現地取材を通じて、“創造都市”とも称されるポートランドの人々のライフスタイルと、地域に根ざしたビジネスのヒントを見つめました。

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常に多くの人で賑わうファーマーズマーケット

常に多くの人で賑わうファーマーズマーケット

ポートランドの特徴を表すキーワード「ローカルファースト」。地元の生産者や事業者、地元ブランドを大切にする考え方だ。日々開催されているファーマーズマーケットの賑わいを見れば一目瞭然、地元で生産された上質な食材を率先して市民が買い求め、地産地消の文化が根づいている。この考え方はあらゆる産業領域に浸透し、地域内で好循環が生まれている。こうした市民のライフスタイルが生まれた背景には、1960年代から続く独自の都市開発の歴史があり、他の都市に先駆けて行政と市民が一体となってすすめる自然との共生モデルが形成されてきたからなのだ。

「スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ」と「クライド・コモン」という人気店も併設し、夜も様々な人の交流が生まれるエースホテル

「スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ」と「クライド・コモン」という人気店も併設し、夜も様々な人の交流が生まれるエースホテル

いまやポートランドのアイコン的存在となったエースホテル。中心部のダウンタウンと、元倉庫街が生まれ変わった話題のパールディストリクト地区の間に位置するこのホテルは、「地域コミュニティのハブ」をめざす明確なコンセプトで運営されている。冒頭の写真にも使用した象徴的なロビーラウンジは、宿泊客と市民のオープンな社交場として機能している。築90年の古い建物の雰囲気を残しつつ、モダンにアップデートされた空間。ローカルの資材やプロダクトを活用し、客室には地元アーティストの作品を多く取り入れ、この場を通じて人やリソースの交流が生まれるハブとなっているのだ。

オールドタウンに位置する、古い建物をリノベーションしたThe Society Hotel

オールドタウンに位置する、古い建物をリノベーションしたThe Society Hotel

エースホテルのように地域コミュニティ内での交流を創出するような場は、市内の各地で生まれている。行政と民間の間に立ちポートランドの都市開発を担ってきたPDC(ポートランド市開発局)では現在、ダウンタウンやパールディストリクトに続き、荒廃が進んでいた歴史地区オールドタウンの変革に着手している。元々ある歴史的建造物や小規模アートギャラリー、飲食店等の価値を受け継ぎ、いかに市民が来たくなるような魅力的なまちづくりをしていくか、地域と連携しながら開発を進めていく予定だ。すでに旧連邦移民局の建物を校舎としたアートカレッジPNCA(Pacific Northwest College of Art)や、世界から訪れる観光客が手頃な価格でステイできるスタイリッシュなホステルThe Society Hotelも登場し、今後の変化にも注目だ。

ワイデン+ケネディの本社ビルのコモンエリア(上)で開催されるアート展示の様子(下)

ワイデン+ケネディの本社ビルのコモンエリア(上)で開催されるアート展示の様子(下)

早くからヒッピーやアーティストが移り住んできたポートランドには、自由で創造性豊かなアートカルチャーが根づき、市民のDIY精神やまちづくり、文化形成におけるクリエイティブ・シンキングに反映されている。

ポートランドで誕生し、いまや世界8都市に拠点を置くグローバルクリエイティブエージェンシーWieden+Kennedy(ワイデン+ケネディ)では、現在でも地域のアートカルチャーをインスピレーションの源として大切にし、創業から一貫して地域コミュニティとの関係を重視している。パールディストリクト地区にある本社ビル1階のエントランスに広がるコモンエリアと呼ばれる空間を定期的に開放し、地元のアーティストの作品発表、交流の場として提供したり、毎月第一木曜日に地域一帯で開催される「First Thursday(ファースト・サーズデイ)」と呼ばれるアート交流イベントでも開放し、社員と地元アーティスト、市民がつながる場となっている。行政や企業が地域のアートコミュニティを支援し、積極的に交流の場を創り出す土壌が、ポートランドの創造性をいっそう高めている。

ADXで加工作業に没頭するメンバーたち(上) ADXのディレクターMatt Preston氏(中)と、 IPRCのディレクターA.M. O’Malley氏(下)

ADXで加工作業に没頭するメンバーたち(上) ADXのディレクターMatt Preston氏(中)と、 IPRCのディレクターA.M. O’Malley氏(下)

DIY(Do It Yourself)もポートランドを象徴するカルチャーだ。自然資源に恵まれ、早くからものづくり産業が芽生えた中で、「ローカルファースト」の考え方やアートカルチャーとの相乗効果も生まれ、ほしいモノ・暮らしのスタイルは自分で創る、といった発想が浸透してきた。

そんな中で近年、DIYカルチャーが新たなコミュニティを形成し始めた事例がある。例えば、DIYを楽しむ人や自分で事業を起ち上げたい人向けの会員制スペースとして運営されているADXでは、木材・金属加工、縫製、ジュエリーメイキング、レーザーカット、グラフィティ、3Dプリントなど多岐に渡るリソースや設備、知識や技術をシェアし、メイカーたちのコミュニティが拡大している。この場から新事業が生まれるケースも多いという。

同様に、ポートランドで早くから根づいてきたZINE(自主制作出版物)カルチャーを支えるIPRC(Independent Publishing Resource Center)も、ZINE制作に必要なリソースをシェアし、コミュニティを拡大している場所だ。

こうした資源や設備、知識や技能をみんなで共有し、共にコミュニティを発展させていくという考え方が、じつにポートランドらしい。

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地元の上質な食材やプロダクトとその生産者に最高の敬意を表し、取り扱う商品の大部分をローカル産品が占めるという“Super Local First”なスーパーマーケットNew Seasons Marketが市民に愛されている。

店内の野菜売り場には額入りで生産者の写真が飾られ、至るところで産品のストーリーを紹介。プレゼンテーションに徹底的にこだわり、コミュニティへの愛が全面に表現されている。地域環境への配慮や社会貢献活動にも積極的で、利益の10%を満足な食事ができない市民の援助や教育、環境NPO等に寄付されているという。

企業、生産者、地域コミュニティの良好な関係が目に見えてわかる、ポートランドらしいビジネスモデルといえるだろう。

生産者の写真が飾られた野菜売り場(左)試食・試飲コーナーでは陽気な販売員が積極的に勧めてくれる(右)

生産者の写真が飾られた野菜売り場(左)試食・試飲コーナーでは陽気な販売員が積極的に勧めてくれる(右)

コーヒー文化の先進地ならでは、地元産コーヒーブランドがズラリと並ぶ(左)店内にあるGrowler Barは、地元のクラフトビール/サイダー事業者と消費者をつなぐユニークなサービス。専用のボトルを購入すれば、設置されたタンクから割安で補充して持ち帰ることができる(右)。

コーヒー文化の先進地ならでは、地元産コーヒーブランドがズラリと並ぶ(左)店内にあるGrowler Barは、地元のクラフトビール/サイダー事業者と消費者をつなぐユニークなサービス。専用のボトルを購入すれば、設置されたタンクから割安で補充して持ち帰ることができる(右)。

 

Online Entertainment MAGAZINE「Edea(イーディア)」今回のポートランド編は、“LIFE IS ENTERTAINMENT”をテーマに、国内外のまちづくりや暮らしのアイデアを特集するセガサミーホールディングスのウェブマガジン「Edea(イーディア)」とのコラボレーションで、特徴的な事例を抜粋してお送りしました。Edeaサイト上の本編では二章にわたって、より深くポートランドのいまについて特集しています。ぜひご覧ください。

■Online Entertainment MAGAZINE「Edea(イーディア)」

第一章:ヒューマンファースト・デベロップメント

第二章:コミュニティの生まれるところ

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