~シリーズ 世界のライフスタイル~ 変わりゆく大国インド 都市部の食シーン キーワードは「Hybrid & Updates」

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インドは2025年には人口が中国を抜き世界最大となり、2050年までにはGDPも米国を抜き中国に次ぐ世界2位の経済大国になると予測されています。ご存知の通り、複雑な歴史背景や多様な民族、言語、宗教によって構成されており、地域による文化の違い、政府による規制など市場としての難しさがあることも事実です。ただ、急速な発展を続けるデリー、ムンバイといった大都市では、伝統文化や習慣と海外から入ってくる文化が混じり合い、新しいライフスタイルやトレンドが続々と生まれています。大きな変革期を迎えている大国インド都市部の食シーンのいまをお届けします。

① 「Hybrid & Updates」プロダクトの隆盛

大国インドの小売市場全体を見ると、キラナショップと呼ばれる小規模の伝統小売店が街中の至る所に存在し大部分を占めている。しかし大都市ではスーパーマーケットやモール等のモダントレードが急成長を続け、存在感を高めている。無論、モダントレードには新しいものを受け入れ、新しいものを求める生活者が集まり、彼らに向けて様々なプロダクトやサービスが展開されている。なかでも、欧米のトレンドを取り入れつつも、インドらしさを巧みに融合させた「Hybrid & Updates」プロダクツに注目したい。

欧米トレンド×インドらしさ、洗練されたハイブリッドプロダクト

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ムンバイ発の「RAW pressery」は、高級スーパーやカフェ等で積極的に展開している人気のコールドプレスジュースブランド。100NATURALを謳う新鮮な素材と洗練されたデザイン、何よりもフレーバーの豊富さが目を引く。フルーツやスーパーフードMIXの他、デトックス効果が期待できる活性炭、健康食として認知されている抹茶、そしてターメリックやペッパー等のスパイスやインドの伝承医学アーユルヴェーダの三大果実であるアムラといった、インドならでは成分をMIXしていることも興味深い。売場では販売員を配置し、積極的に試飲を勧め、オンラインでは定期購入サービスを展開する等、先進的だ。

同様に、マヨネーズやソース、ディップといった、もともと海外から入ってきた食文化に使う調味料・ソース商品にも、「Wingreens」や「Veeba」などインド発の新しいブランドが登場してきている。共通点は、健康志向や原材料へのこだわりのアピール、洗練されたデザイン、Egg Free(卵不使用)、ベジ対応はもちろんのこと、やはりインド人の食文化を意識した多彩なフレーバーが揃う。マヨネーズにペッパーやミントがMIXされていたり、インド料理のアチャール(野菜や果物の漬物)用やタンドールソースといったものまで、インド人の食シーンの変化に合わせた提案をしている。

 

 

 

 

 

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インドのビールといえば「キングフィッシャー」が有名だが、変化が見え始めた。海外から厳選した原料を集め、インド発のクラフトビールブランドとして打ち出す「BIRA」は、都市部の若者をメインターゲットに人気を拡大している。ポップなデザイン、こだわりの原料、ローカロリーなビールとして、WhiteIPAなど5つのラインナップを揃える。創設者のAnkur Jain氏は、アメリカ・NYでヘルスケアのスタートアップ企業でビジネス経験を積み、2015年インドに帰国後「BIRA」をローンチ。「Imagined in India, For the World」のキャッチコピーで、インドブランドを訴求。今後、海外での経験を持ち帰り、インド流のハイブリッドプロダクト&サービスを展開する事例がますます増えていくだろう。

 

自国の食文化をアップデート、現代の生活者に新しい価値を訴求

sp-mph-1-6DESI ATTA社が販売する全粒小麦粉「ATTA」シリーズ。アタ粉はチャパティやドーサなど幅広く利用され、インドの家庭料理には欠かせない食材。「伝統的な味をよりシンプルな方法で」というキャッチコピーで、これまでは市場等で量り売りで購入していたものを、Ready Mixというキット化された商品で現代の生活者に訴求している。同様にマサラミックス等のインド料理に必須のスパイス商品にもこのようなアップデート商品が広がっている。

sp-mph-1-7「家庭で飲まれていたママの味」をRTD化した飲料「Paper Boat」が、キラナショップからモダントレードまで幅広い売場に登場。クミンのジュースやジャルジーラ、ラッシーなどインド人にとって馴染みのある飲み物をRTD化したことで、都市生活者のニーズに合致し、より手軽に伝統の味を楽しめるような商品が増えている。

 

 

高まる健康志向と伝統医学を取り入れた付加価値プロダクト

sp-mph-1-8世界的にインドの伝承医学アーユルヴェーダやヨガ等の健康法、スパイス食文化がもたらす健康効果に注目が集まる中、インドのアッパーミドル~富裕層の間でもあらためて自国の伝承医学やオーガニック・ハーバル系の健康食品の価値が見直されている。トゥルシー茶やサプリメントで知られる「Organic India」といった人気ブランドをはじめ、高付加価値を打ち出すMade in Indiaの新興メーカーが登場してきており、あわせて緑茶等のお茶製品は、健康的なイメージも相まって海外ブランドの参入も多い。健康食品のマーケットは今後も拡大が予想される。

 

② 外食シーンも“Indian Hybrid”スタイル店が活況

インドの都市部では、グローバルチェーンをはじめ多国籍料理や日本食レストランなどが徐々に登場し、外食シーンの多様性が進化。特に海外での滞在・留学経験のあるアッパーミドル~富裕層の人々は海外の食文化に関心が高く、現地で出会った食事やそのスタイルを自国でも体験したいという潜在ニーズも高い。こうした需要を柔軟にとらえ、新たに登場する“Indian Hybrid”スタイルの外食店が活況だ。

 

インド版スタバ?!伝統のチャイをモダナイズして提供

古くから屋台や道端で提供され、インドを代表する飲み物チャイ。そんなチャイを現代風にアレンジし、スタイリッシュなカフェ形態やドリンクスタンドで提供する「Chaayos」や「CHAI POINT」といったチェーン店が大人気。モール内ではまさにスターバックスと隣合わせになっていることもあり、人気も遜色ない。背景には、昔ながらの屋台での食事に対して不衛生と考える人が増えていることもあるが、何より、フードメニューも含めてこうしたモダンなスタイルが現代人に受け入れられている証拠だろう。

インド版スタバ?!伝統のチャイをモダナイズして提供

 

地方料理をファストフード化する外食トレンド

WOWmomo」はコルカタ発のファストフードチェーン。チベットやネパール、インドのダージリン等で親しまれている蒸し餃子「モモ」をファストフード化し、カジュアルに提供している。現在は9都市に180店舗展開し、高級モールや若者の集まるトレンドスポットにも出店し、人気を集めている。海外だけでなく、自国の地方の伝統料理に再注目し、モダンに提供する外食店も増えている。

地方料理をファストフード化する外食トレンド

 

インド流で受け入れられるカスタマイズフード

sp-mph-2-1外資系企業も多く集まるデリー・グルガオンのビジネス地区に隣接する商業施設「Cyber Hub」には、人気店から最新のショップまで様々なレストランが集まる話題のエリア。新たにオープンした「The Chef‘s Bowl」は、NYスタイルのカスタマイズできるサラダバーのように、好みのインド料理をワンプレートにカスタマイズして提供。スーパーフードやプロテイン等のヘルシーな選択肢も揃えており、バリエーションも豊富だ。

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インド人の感性で日本食をアレンジ

デリーやムンバイなどの大都市では日本食を扱う店も少しずつ増えているが、いまだ本格的な日本食店は少ない。むしろ可能性があるのは、日本食を現地向けにいかに新しくローカライズして提案できるかだろう。例えば、デリーにあるインド人がオーナーを務める日本をテーマにしたフュージョン系レストラン「Guppy」は、ユニークな演出と提案で現地の富裕層に人気のレストランになっている。店舗の外観、内装からメニューまで、インド人ならではの感性から生み出された独自な世界観が現地では受け入れられることもある。日本でいう本物志向も大切だが、現地目線こそ必要不可欠といえるだろう。

インド人の感性で日本食をアレンジ

 

都市部のトレンドエリアに急増、若者が集うカフェバー

都市部のトレンドエリアに急増、若者が集うカフェバーインドでは州によっては禁酒だったり、お酒をあまり飲まないイメージがあるかもしれないが、都市部では事情が違う。若者が集うようなスタイリッシュなカフェバーが増加している。例えば、デリー、ムンバイ、バンガロールなどに店舗を増やす「SOCIAL」は、シグネチャーである様々なカクテルをはじめ世界のお酒を揃え、フードメニューもベジ・ノンベジどちらも楽しめるほど豊富。内装は店舗によって異なるが、ナイトクラブのようだったり、コワーキングスペースを併設していたりと、若者の心をつかんでいる。

都市部のトレンドエリアに急増、若者が集うカフェバー

 


 

 

拡大するフードデリバリー市場

拡大するフードデリバリー市場

定番の「Zomato」やスタートアップ系の「Swiggy」、グローバル展開する「foodpanda」、「UberEATS」など競争が激化するフードデリバリー市場

インドの2017年オンラインフードデリバリー市場は102.7億ルピー(約170億円)と、2016年に比べて29%伸びており(Netscribes調べ)、インフラ整備の拡充や格安スマホ普及も後押しし、今後もさらに拡大することが予想されている。都市部ではレストランの入口にデリバリー対応のマークが貼られている光景が当たり前になった。新しいフード事業を立ち上げる際に、最初は店舗を持たずにフードデリバリーのみというスタイルも多く、食に関心の高い消費者にとってフードデリバリーは、便利なだけでなく新しい食事を試してみる機会にもなっている。マーケティング視点でもフードデリバリー市場の動向は見逃せない。

インドの食シーンに変革をもたらすニュージェネレーション

今回は現地の食シーンに関する生声を聞くために行ったシェフや若者へのインタビューから、新しい兆しを感じることができた。抜粋してご紹介する。

Curry Singh kitchens(Delhi) Chef, Reetika Gill より本質的な「食と健康」の考え方が、家庭でも外食でも確実に広がっていくでしょう

家庭料理をアップデートして提供

Curry Singh kitchens(Delhi) Chef, Reetika Gill私は料理人の親のもとで育ち、自分の店でパンジャーブ地方の家庭料理をテーマに提供しています。ただ、私は一般的にインド料理で使用するクリームやドライフルーツは、脂分やカロリーが高いため使用していません。また、使う食材はその日に市場に行って仕入れたり、提携している農家さんから良質なものを厳選して使います。アチャールも手作りですし、作り置きもしません。本当に食材の旬にあわせて、良い料理を提供したいのです。まだこうした考えをする人は少ないですが、そういう意味では伝統の家庭料理をより現代向けに、良い形でアップデートしていきたいと考えています。

生活者が外食に求めるものに変化の兆し

生活者が外食に求めるものに変化の兆しインド人が外食で求めるものは、普段家庭では食べないファストフードや多国籍料理が一般的でしたが、私たちの店「Curry Singh kitchens」に通ってくれるお客さんは、インド料理でもよりヘルシーでオーセンティックな料理を求めています。通常使われているクリームやドライフルーツをなぜ使わないか、それをしっかり伝えていきます。日々の食事と健康の本質的な関係を意識している人はまだまだ少ないですが、徐々に、確実に増えています。その風潮を感じます。だからこそ、私は食材にこだわり、キッチンの衛生環境にこだわり、時には伝統をアレンジしたり新しい挑戦をしながら、より良い食事を提供していきたいと思っています。

A Bar Called Life(Mumbai) Manager 新世代の若者は、新しいバー空間を求めています

海外から積極的にアイデアを取り入れる

A Bar Called Life(Mumbai) Manager 新世代の若者は、新しいバー空間を求めています私たちのお店に来るムンバイのアッパーミドル層以上の若者たちは、よりファッショナブルで新しく、快適な空間を求めています。友人やパートナーと楽しむ夜のハングアウトを、気軽にお酒を飲みながらスタイリッシュかつリラックスして過ごしたいのです。

この店では内装や音楽も海外からヒントを取り入れていますし、中庭の空間では巨大モニターでスポーツ観戦しながら食事もできます。メニューも、豊富なお酒やフードはもちろんですが、宗教的にお酒が飲めない人に向けたモクテルや、寿司をはじめ海外の料理のエッセンスも取り入れています。価格も若者が来れるよう、できるだけリーズナブルに設定しました。高級ホテル内の一部の人しか行けないような場所ではなく、街中にこういった若者向けのバー空間は今後ますます増えていくでしょう。

若者インタビュー ぼくたちは積極的に新しいものを試してみたい

ベジ・ノンベジ、宗教概念もフレキシブルに

若者インタビュー ぼくたちは積極的に新しいものを試してみたいぼくたちの周りでは、食でもテクノロジーでも文化でも、どんどん新しいものを試してみたいと考える人が多くなっています。その点は親世代とは違うと思います。

都市部では食のスタイルも柔軟な人が増えていて、例えば両親と暮らしている人は家庭では厳格なベジの食事をしているけど、外食する時はお肉やお酒を飲んだり、使い分けている人もいますよ。インドの伝統はもちろん大切にしつつ、新しいものや文化にも積極的に触れていきたいのです。

日本の印象?自動車や家電のブランドは有名だけど、食に関しては「寿司」くらいしか知らないです。日本は品質が良かったり先進的なイメージがあるから、もっといろんな日本のものを試してみたいですね。

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今回はインド都市部の食シーンの変化にフォーカスして現地取材レポートをお届けしました。大国インドは、間違いなく、大きな変革期に入っています。増えていく中間層以上の人々、そして伝統を受け継ぎつつ新しいものを柔軟に取り入れていく若い世代の消費意欲。特に「食」に関わるシーンはその変化が顕著に進みそうです。ただ、欧米企業が積極的に進出を試みるなか、まだまだ日本の存在感は薄いと言わざるを得ません。確かに、広大で多様性を極めるインドを一括りにとらえると、難しい市場であることは間違いありません。そのため、まずは伝統と変化の兆し、現地生活者の嗜好やニーズをしっかり捉え、どの地域で、誰をターゲットに、どんなパートナーと連携して挑戦していくか、といったビジョン設定が必要です。そして、最初から巨大なマーケットを狙うのではなく、まずは限定したエリア、限定したターゲットからというように、小さくても一歩を踏み出すことが新たな道を切り拓くことにつながるのではないでしょうか。


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