オーガニックとナチュラルプロダクツの国際見本市「SANA, international exhibition of organic and natural products 2019(以下SANA)」が、2019年9月6日から9日の4日間にわたりイタリアのボローニャ フィエラ(展示貿易センター)で開催されました。今年で31回目を数える同イベントは、30カ国から1,000の企業や団体が出展し、飲食関係者からバイヤー、一般客らの来場者で賑わい、2,500件の商取引が行われました。述べ6万平方メートルの会場は「フード」「ケア&ビューティー」「グリーン・ライフスタイル」の3つのカテゴリーから構成され、フード会場には今回初めて日本パビリオンが設けられたことからも日本企業の注目度が伺えます。会場内には、新製品950点を一堂に紹介する展示室が設けられており、来場者にはトレンドが理解しやすい構成となっていました。
それでは今回のSANAを、TNCの視点で5つのキーワードでお伝えします。
本場で誕生、フルーティな“飲むバルサミコ酢”
今回のSANAで特に目新しいものが多かったのが飲料分野でした。イタリア食材の代表格であるバルサミコ酢を使った飲料「飲むバルサミコ酢」が新登場。ありそうで無かった「飲むバルサミコ酢」を発表したのは、モデナのバルサミコ酢メーカー(Bongiorno社)です。お酢を飲むという発想が無く、酸っぱいものがそれほど得意ではないイタリア人でも飲めるように酸味は薄めにしてあり、ハチミツやオレンジなどフルーツと合わせた5種類のフレーバーで展開されています。抗酸化作用があり、消化を助け、朝に飲むと元気になる飲料として打ち出しています。

(写真左)意外と反応が良い「飲むお酢」
(写真右)注目のザクロなどのフレーバーも展開
スーパーフードを使用したメンタル・ドリンク
医師監修のもと「健康的な方法で、集中力を高めることでストレスに打ち勝つため」に開発されたという「メンタル・ドリンク」。Leaveyours社が一年半前に開発したというこの商品は、緑茶とジンジャーをベースに、アシュワガンダやシーバックソーンなど、医師が選んだ5つのナチュラルな原料を使用しています。タウリンやカフェインを含まず、臓器に負担をかけずに活力をもたらすため、アスリートやビジネスマン、子どもなどに適した商品としており、ホットでもコールドでも飲めるドリンク。その効能から、スイスでは薬局で販売されています。

(写真左上)ネットでは6本から購入が可能(写真左下)原料にはマテ茶も使用されている
(写真中)会場では可愛いポットから試飲できる(写真右)商品を監修した医師
日本人には無い発想で誕生した「タケノコビール
日本では旬の味覚として親しまれているタケノコですが、実はイタリアでは今まで全く馴染みのない食材でした。ピエモンテ州のBambubio社はこれに目をつけ、日本では一般的な「タケノコの水煮」をペーストにして、それをパンやブルスケッタにつけて食べるという日本には無い発想での食べ方を提案していました。このようにタケノコの新しい活用法として誕生し、今回最も気になった商品はなんと「タケノコのビール」。ノンフィルター&ダブルモルトのビールで、飲んですぐに感じる苦味はタケノコの発酵によるもの。カルシウムや鉄、亜鉛などを含み栄養豊富でありながら、柑橘を思わせる酸味を感じるインディア・ペールエールのような味わいのビールです

(写真左)タケノコのペーストは1瓶8.09ユーロ
(写真中)ボトルデザインにもこだわったバンブー(タケノコ)ビール
(写真右)「イタリアンバンブーフード」を標榜するメーカー
発祥はなんと古代エジプトの「カムット小麦」

小麦は様々な料理に使用されるため注目度が高い
ピザやパスタなどイタリアの代表料理に欠かせない小麦粉ですが、最近ではイタリアでも生地を選べるピザ屋さんが増えてきました。カムット小麦やファッロ小麦のような古代小麦(イタリア語でアンティーコ・グラーノ)は、普通の小麦よりも栄養価が高く、人工的な加工がほぼされていないことから、パレオダイエットの食材の1つとして注目されています。小麦アレルギーでも食べられる人もいるため、普通の小麦粉の代替品として人気が高まっています。特に、古代エジプトで栽培されていたとされ、オーガニックな土壌での栽培が義務付けられている「カムット小麦」は、今回のSANAでは粉そのものはもちろん、パスタやイタリアのクリスマス菓子のパネットーネにも古代小麦バージョンが紹介されていました。

(写真左)豊かなバリエーション
(写真右)カムット小麦を使用したピザ
鮮やかな青が目を惹きつけるスピルリナ
世界的にバタフライピーなどを使った「ブルーフード」トレンドの流れはイタリアにも及び、新商品が続々登場しています。特にイタリアでのブルーフードでよく見られるものはスピルリナ(藻類の一種)を使ったもの。オーソドックスなイタリア食材にスピルリナを混ぜることで、青く斬新な見た目に様変わりし、多くのバイヤーたちの目を引きつけ質問が殺到していました。トスカーナ州のSeverino Becagli社ではペコリーノチーズやパスタ、ビールやチョコレートなど幅広いラインナップを展開

ビールやパスタ、チーズやチョコレートと様々に形を変えるスピルリナ
スピルリナ入りの食品バリエーション拡大
サルデーニャ島のLivegreen社では、パスタの他、食べやすいタブレットやクッキー、栄養バーも販売。美味しく手軽にスピルリナの栄養を取り入れることのできる製品を提供しています。プーリア州のApuliaKundi社では、毎朝スティック状のスピルリナ2グラムをジュースに混ぜるかヨーグルトにふりかけて食すことを提案。ブドウジュースにもスピルリナ入りが新登場していました(D’Uva社)。

スピルリナクッキー

(写真左)スピルリナスティック
(写真右)レモンやジンジャーと組み合わせ飲みやすくしたスピルリナ飲料
食材として相性の良いジンジャー×フルーツ商品
実は意外にも最近までジンジャーに馴染みのなかったイタリアですが、ここ数年でスーパーフードとして注目を集め、すっかりトレンドの食材になりました。このスパイスはフルーツとの相性が良いこともあり、ブースで目にしたレモン&ジンジャーの組み合わせドリンクは数知れず。他にも、桃やりんごとジンジャーを組み合わせたジュースや、ジンジャー入りオリーブオイルもありました。

(写真左)ジンジャー、レモン、ビネガーなどのドリンク
(写真右)いろんな料理に使えそうなジンジャー入りオリーブオイル
特産品や伝統食とも結びつくターメリック
同じくスーパーフードのターメリック(ウコン)を使った商品も豊富。オレンジ&ターメリックのジュースや、ターメリック入りのプーリア伝統スナック・タラッリ(Terre di Puglia社)など。また、ジンジャーとターメリックの両方を一度に取れる塩(Le spiritose di Bologna社)やタブレット(Santiveri社)も。「ロングライフのエネルギータブレット」という謳い文句で紹介されています。

(写真左)プーリア州の伝統菓子にターメリックが入った商品
(写真右上)ジンジャーとターメリックが入った塩
(写真右下)ジンジャーとターメリック入り健康タブレット
奮闘する日本勢ブース
SANAでは初めてJapan Pavillionが設けられ、日本発のオーガニック食品に注目が集まりました。JETROが支援するこのパビリオンでは計10社が出展し、欧州での市場拡大を目指す醤油、味噌、日本酒、緑茶、柚子製品などのオーガニック食品を出品。初めてのパビリオン出展、さらに欧州でのオーガニック認証申請のハードルがまだ高いこともあり、参加企業は10社のみに留まったものの、今後のイタリア市場拡大への足がかりにしたいと出展者たちは熱心に商品をPRしていました。 日本からのアウトバウンド目線として考えると、伝統的な食文化を守るイタリア市場に入り込むには、日本食をより「健康的な食品」として打ち出していくことに可能性を感じました。また逆に日本へのインバウンドの目線としては、冒頭で紹介した「飲むバルサミコ酢」のような商品が、ケミカルではない、日本で伝統的に食されている酢やお茶、漢方などを使った独自のエナジードリンク作りなどの参考になると思います。

(写真左)Japan Pavillionの様子
(写真右)来場者からの関心が高いため商品説明にも熱がこもる
注目を集めるTOFUなどの日本発の食材
Japan Pavillion以外でも日本食は多く目にし、オーガニック関係者間での注目度の高さを実感しました。近年増えているベジタリアン&ビーガン向け食材として、豆腐はイタリアでもTOFUとして浸透。例えばドイツの企業は豆腐をマンゴーなどと炒めて提供していましたが来場者から好評を得ていました。このように、単に食材を紹介するだけではなく、実際に調理したものを試食させるなどの工夫ができれば来場者の理解が深まるため、日本発の食材も大いに可能性はありそうです。他にも、Erbamea社からは枝豆のパスタやしいたけ・舞茸のタブレットなど、食材名が日本語のまま紹介されていました。

霊芝、しいたけ、舞茸などのタブレット商品
スローフード発祥の国であり、じっくりゆっくり料理を作る伝統があるイタリアですが、時代の流れに合わせて有機野菜と栄養バランスにこだわったヘルシーなインスタントフードも登場。リミニのdnabio社では、クスクスやスープなど16種類のオーガニックカップフードを展開。有機野菜の味わいも楽しめます。

キヌアスープやカスタードなど、さまざまなオーガニックカップフード
世界の中でも食べ物に関しては比較的保守的な国であるイタリア。その伝統を大切にする精神とスローフード発祥の国であるということを背景に、食材のおいしさや安全性を左右するオーガニック製品(イタリアではBio)への注目が年々高まっています。過去一年間に少なくとも一度は意識してオーガニック製品を購入した世帯は、2019年において86%にまで上り、これは7年前の2012年の53%から比べると30%以上も増加しています(出典:Nomisma per Osservatorio SANA 2019)。SANAでも大々的にブースを展開した、イタリアの大手ナチュラル&オーガニック系食品スーパーNaturaSiでは、健康や食生活に関心の強い客層向けにヘルシーな日本食品を多く販売しています。 会場を振り返ってみて思うのは、ビネガーや小麦など、身近な食材が本来持つ力に改めて着目したり、海外からの食材を柔軟に取り入れ、現代的な新しい商品として生み出しているケースが多く見受けられました。そうした動向は、日本市場の商品開発においても参考になる考え方ではないかと感じました。
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