~ミラノ万博レポート~ 「食」をテーマとしたミラノ万博に見る 食糧をめぐる地球規模の課題

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【ミラノ万博レポート】 「食」をテーマとしたミラノ万博に見る 食糧をめぐる地球規模の課題「Feeding the planet, Energy for Life(地球に食料を、生命にエネルギーを)」と題し、初めての食をテーマとしたミラノ国際博覧会(http://www.expo2015.org/en)が、5月1日から10月31日までの半年間開催されました。参加国に対して食糧をめぐる課題とその解決策の提示が求められた、理念提唱型の万博。TNCでは、さまざまな業務を通して今回の万博と接点を持ち、現地視察も行ってきました。今回のVOICEjpではその総括として、TNCの視点から見たミラノ万博をレポートします。

●総来場者数が2,000万人を超えた食の祭典、ミラノ万博

白大理石のくずやモルタルなどのリサイクル素材を使ったセメントが、独特の光沢感を与えるイタリア館。

白大理石のくずやモルタルなどのリサイクル素材を使ったセメントが、独特の光沢感を与えるイタリア館。

東京ドーム23.5個分、110万平方メートル、会場のメインストリートが2kmに渡る広大な敷地に、総参加国148ヶ国のうち、52ヶ国が独立パビリオンを設置。会期184日間の総来場者数は当初の目標であった2,000万人を超える、約2,150万人。人気のパビリオンでは入場までに約2時間待ち、開催国であるイタリア館に至っては、行列の後方がパビリオンから目視できないほどの盛況ぶりでした。
「食」をテーマとした今回の万博ですが、正確には食糧や食糧の持続可能性などに対する課題を扱う万博でした。世界中で発生している、食糧不足や飢餓などの深刻な問題から、その対極にある飽食や肥満、大量の食糧廃棄問題、次世代の食の観念を育てる食育に至るまで、さまざまな課題に対する提言を各国パビリオンが展開していました。今回はその中から、開催国イタリア、日本、未来型スーパーCOOPのパビリオンをご紹介します。

●一酸化窒素を吸収する外壁で解決策を提示したイタリア館【イタリア館】
イタリア館のテーマは「VIVAIO ITALIA(苗床、植木畑の意)」。これはミラノ万博のサブテーマである「持続可能性」に対して、次世代の食のシーンを担う若者を育成することで貢献することを意味します。館内では、イタリア各州を代表する食関連の有識者がビジョンを語るプロジェクション・マッピングや未来の農作物の可能性を展示。パビリオンの建物には、大気中の一酸化窒素や窒素酸化物を吸収する外壁と太陽光発電を行うガラス屋根を設置し、食の生産に必要不可欠な地球環境の保全への解決策を提示しています。また、イタリア館前には、イタリアの食やワイン、食文化を紹介する小さなパビリオンが建ち並び、試食や試飲を重ねてイタリアを味わう人々で賑わっていました。

展示ルーム。

全面ガラス張りのスクリーンに、イタリア各地方の風景や名所、絵画などのイタリアの美の象徴が映し出される展示ルーム。

イタリア全22州を代表する人物のフィギュアの展示ルーム

イタリア全22州を代表する人物のフィギュアの展示ルーム。自分の土地や人生、将来について、本人の語る声が流れている。

ワイン・パビリオン

イタリア全土から集められた1,400種類ものワインが並ぶ、ワイン・パビリオン。10ユーロで3種類のワインをテイスティングすることが可能。ソムリエが各コーナーに待機している。

万博のシンボル「生命の樹」

本万博のシンボル「生命の樹」。LEDで照らされた生命の樹の周りには、イタリア各地のさまざまな諺が紹介されている。

●毎食ごとの食への感謝とおすそわけ精神を伝える日本館

博覧会国際事務局主催のパビリオンプライズでは展示デザイン部門で「金賞」を受賞した日本館。最高待ち時間は4時間、総来館者数228万人と圧倒的な人気を博しました。
日本館のテーマは「Harmonious Diversity -共存する多様性-」。日本の食の産地から食卓までを学べるコース設定となっており、所要時間約50分。自然とともに共生し続けてきた日本の農林水産業、日本食や食文化にある多様な知恵と技術、そして日本人の食に対する精神が、スマートフォンのアプリケーションやセンシング技術といったハイテクノロジーと和のデザインによって表現されました。日本館2階にあるCoCo壱番屋やサガミなどによる和食レストランのフードコートも連日満席と大盛況の様子でした。

日本館のサブメッセージは、「いただきます、ごちそうさま、もったいない、おすそわけの日本精神が世界を救う」。日本館を見学して感じたことは、食べ物に感謝し、無駄にしないという概念を、子どもの頃から自然に身につける日本人だからこそ、世界へ発信できるメッセージがあるということ。日本館で多用されたハイテクノロジーや芸術性の高い和のデザインだけが注目を集めるのではなく、その真髄にある、日本人が受け継いできた毎食ごとの食への感謝の気持ちや、他者との分かち合いの精神が、今回の日本館プロジェクトを通して世界の人々に共有され、世界中に伝播していくことに期待が高まります。

「立体木格子」で建てられた日本館

釘を一切使わず、木材のみを組んで造る日本の伝統建築方式「立体木格子」で建てられた日本館。


チームラボによるプロジェクション・マッピング

チームラボによるプロジェクション・マッピング。映像と連動した日本館専用アプリから日本食についてのデータが入手できる。

ライブ・パフォーマンス・シアター

未来のレストランをイメージしたライブ・パフォーマンス・シアター。一席ごとに配された木製の箸とミニディスプレイで、来場者がショーに参加できるスタイル。

フードコート

価格の高さで話題となった「美濃吉」の独立店舗を始め、「CoCo壱番屋」や「モスバーガー」や「今半」が出店したフードコート。

●ハイテクノロジーシステムを導入、未来型スーパー「COOP」未来型スーパー「COOP」イタリアでは最大級となるスーパーマーケットチェーンを展開するCOOPイタリアのパビリオン「Future Food District(未来の食の区域)」がハイテクノロジーを駆使したスーパーマーケットとして注目を集めました。
この未来型スーパーでは、陳列されているほぼすべての商品に対して、画期的なデジタルシステムを導入していました。
このシステムは、商品へ手を伸ばすと、棚上部に設置されているデジタルパネルがそのアクションを検知し、当該商品の価格から生産地、栄養価、アレルギー源、カーボンフットプリント量までを表示するというものです。このシステムが実用化されれば、商品ラベルや価格表は今後一切不要となります。
COOPの提唱するこの未来のスーパーマーケットは、来場者から好評を博し、9月初旬の時点で来場者数100万人を突破。今回開発された技術はそれほど遠くない未来、実店舗に導入されると言われています。→「COOP」パビリオンの映像はこちらから確認いただけます。

入口正面

入口正面には、実用段階ではないものの、商品の棚卸しを行うロボットが展示されていた。

トレーサビリティーシステム

パルマの老舗パスタメーカー「Barilla」の万博限定のパスタは、QR コードで生産や流通の過程を確認できるトレーサビリティーシステムを導入。

デジタル冷蔵庫

庫内の食材を自動で管理し、在庫で作ることのできるメニューや調理法を提示するデジタル冷蔵庫。

高性能なキャッシュマシーン

館内の製品はすべて購入可能。高性能なキャッシュマシーンを使い、セルフサービスで会計を行う。

「食べることは生きること」。この概念を全世界で改めて噛み締め、地球という場所で永続的に共生する方法を模索した万博であったと感じます。今回の万博で各国が提示したソリューションを自国だけのものとして捉えず、今後国々が越境し協業し合い、これらの解決策を地球規模で実現できる手段を追求していくことで初めて、今回の万博が成功を遂げたと言えるのではないかと思います。食の祭典としての一面を見ると、会場内ではみんな笑顔で食べ物を頬張っていました。行き交う人々の表情からも、食べ物が人を幸せにすることを強く感じた、2015年ミラノ万博でした。

● ジャパンサローネ「PIAZZA AJINOMOTO 」PIAZZA AJINOMOTO 万博会場の日本政府館では実施できない企業や商品のPRを可能にするために設置された第二拠点が「ジャパンサローネ」。
こちらはミラノの中心地で、 6月25日から7月13日までの19日間開催されました。TNCでは味の素グループで展開された「PIAZZA AJINOMOTO」(7/10~7/12)の企画から運営までをお手伝いさせていただきました。

イタリアで初めての「うま味」の国際シンポジウム開催!

「うま味」の国際シンポジウム

日本料理、イタリア料理のトップシェフ、うま味エキスパート、味覚の研究者の5名がうま味について熱く語りました。

日本をはじめ世界的に注目を集めるうま味(UMAMI)。この国際シンポジウムがジャパンサローネ内で開催されました。テーマは「うま味を知る!料理は変わる!」。うま味は、甘味、酸味、塩味、苦味と並ぶ基本味のひとつで、代表的なうま味物質がグルタミン酸です。うま味は昆布や野菜など、私たちが普段食べているものに多く含まれており、食べ物のおいしさを支える重要な味です。当日はジャーナリストをはじめ120名の来場者がうま味と出会いました。

餃子、ラーメン、焼きそば・・・。
6種類の日本風パスタを目の前で調理!

「PASTA BAR」

調理をしているのは現地在住日本人です。ライフスタイル・リサーチャーをはじめTNCのネットワークが活躍しました。

そして2日間にわたって展開したのが「PASTA BAR」。当初は目標2,000試食を予定していましたが、終わってみれば6,000試食、本当にたくさんの方に召し上がっていただきました。餃子やラーメンの他に、だしで食べるペンネ、ほんだしのロングパスタなど、パスタの国イタリアでの大きな挑戦でしたが、「おいしい!もっと食べたい」という高い評価をいただきました。

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