シリーズ「世界が注目するニッポン」 その2 クラフトビール「COEDO」

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コエドブルワリー三芳工場


厳密に温度管理された工場内のビール熟成タンク


創業当時からのビール職人、小谷野宏さん


(左から)「白(Shiro)」 「瑠璃(Ruri)」 「伽羅(Kyara)」「紅赤(Beniaka)」「漆黒(Shikkoku)」


●「地ビール」から「クラフトビール」へ
江戸時代に川越藩の城下町として栄え、「小江戸」の名で親しまれる埼玉県川越市。特産品のであるさつまいもの規格外品を原料にした世界初のビール造りをスタートさせたのが、クラフトビールブランド「COEDO」で知られるコエドブルワリーだ。

1994年、日本ビール業界のひとつの契機となった規制緩和(ビールの酒税法改正により最低製造数量が2000klから60klへと引き下げられ、小規模醸造所が参入可能に)の実施により、コエドと同様に日本各地にいくつものマイクロブルワリーが誕生、いわゆる「地ビール」ブームが生まれることとなる。しかし、そのブームも2000年代前半までに次第に沈静化。広く流通する大手メーカーのビールに比べてクセが強い、価格が高い、という認識が広がり、人びとに浸透するには至らなかった。

それでも創業当時から徹底的に「職人技」にこだわったビール造りを続けていたコエドは、自信を失うことはなかった。96年の三芳工場開設とともにビールの本場ドイツから代々ブラウマイスター(ビール職人の親方)を家業とする4代目クリスチャン・ミッターバウアー氏を招聘し、当時のコエドのビール職人たちは彼のもとで5年間、徹底的に本場のビール造りを学んだ。大量生産される一般のビールとは一線を画したものづくり、ビール職人たちの「クラフトマンシップ」こそ、コエドブルワリーの根底にある精神だった。

そして2006年、コエドブルワリーは大々的にリブランディングに乗り出す。真摯に続けてきたビール造りに磨きをかけるとともに、日本人の「地ビール」のイメージを塗り替えるため、ビンやラベル、ロゴのデザイン、商品名など、あらゆる部分を刷新し、新しく「クラフトビール」というイメージを打ち出した。これが現在の「COEDO」ブランドの誕生となる。川越の地で生まれたコエドブルワリーの象徴、さつまいもを原料に使ったビール「紅赤(Beniaka)」をはじめ、日本の伝統色をそれぞれ配した5種類のビールを発表。世界中から厳選した天然素材(麦芽・ホップ)を組み合わせて、香り、苦み、コク、のどごし、色にいたるまでまったく異なる特徴をもつ個性豊かなプレミアムクラフトビールを造りあげた。

コエドブルワリー代表の朝霧さん


●Beer Beautiful
COEDOのブランドコンセプトは、“Beer Beautiful”。コエドブルワリー代表の朝霧重治さんに、そのコンセプトに込めた想いをうかがった。「日本では残念なことに、飲食店に入って『とりあえず生!』という注文が定着していて、これはどのビール銘柄でもこだわりがないことを意味しています。でも、本来ビールとは“嗜好品”。麦芽やホップの組み合わせ、醸造の仕方などによって、色、香り、味わい、のどごしなど無限の豊かな表情をもつものです。 “Beer Beautiful(ビールはすばらしい)”。私たちは、ビール本来の姿、多彩な表情や味わい、職人技、そして日本だからこそ生まれうる心を、COEDOを通して全国に、そして世界に発信していきます。でも、大量生産したいわけではありません。価値のわかる人から人へ、 COEDOの魅力が国境を越えて伝わっていけばいいなと思っています。それが私たちの想いです。」

シンガポールで開催された日本食品見本市
「Oishii JAPAN 2013」での様子


メルボルンのパブでCOEDOを楽しむ人たち


●日本の心、世界の「COEDO」へ
2006年に登場したCOEDOビールは、翌年に全5銘柄がモンドセレクションおよびiTQi(国際味覚審査機構)コンテストで受賞。ブランドの象徴でもある川越のさつまいもを使った「紅赤」はモンドセレクションで最高金賞を獲得。その他、国内外のパッケージデザイン賞も数多く受賞した。2010年にはビールのW杯といわれるワールドビアカップ初出品で「紅赤」がシルバーメダルに、ヨーロピアンスターアワードではゴールドアワードに輝いた。他の銘柄も含め、これまで数々の賞を受賞している。受賞歴では世界でもトップクラスだ。

世界の評価に対して、朝霧社長はこう話す。「COEDOが世界で評価されたのは、雑味のないバランスの良さ、個性の強さではなく“美しさ”だと思っています。COEDOのビールは日本の食文化に合わせて食中酒として楽しんでもらいたいので、ビールの味わいはもちろんですが、日本的な“わび・さび”のように引いていく魅力を大切にし、“和”の心をCOEDOブランドに込めました。お客様とブランドのコミュニケーションを担うデザインも、こだわったのは“和”の要素。5種類のビールに配した名前、ラベルに用いた色は日本の伝統色です。また、COEDOのロゴマークは、ビールの原料となるホップの花を日本の家紋の技法で配置しています。味だけでなくブランドとして、日本のビールの精神をこれからも大切にしていきます。」

西欧で生まれたビールに日本のエッセンスを注入して花開いたCOEDOのビール。いまではアメリカ、フランス、オーストラリア、シンガポール、中国、香港、韓国など各国に輸出され、現地でも愛されている。これからタイへの輸出も計画されているとか。小江戸・川越の地から世界へ。ビールで伝わる日本の味と精神、COEDOの今後が楽しみだ。(Text: Yuki Kishimoto)

■取材協力:株式会社協同商事コエドブルワリー

「世界が注目するニッポン」クラフトビール「COEDO」編、いかがでしたでしょうか。TNCでは海外の流通や、食のトレンド情報などをお届けするだけでなく、世界で活躍する日本の優れた製品やサービスにも注目しています。今後もこのシリーズで取り上げていきますので、ご期待ください。こうした様々な情報はFacebookでも更新していますので、ぜひご覧下さい。

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